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健康な歯と歯ぐきをまもるために…。
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オーラルフレイルとは?
最新のお口のケアの考え方が
健康寿命を延ばすカギ
オーラルフレイルという言葉を聞いたことがありますか?オーラルフレイルとは、「Oral(口腔)」と「Frailty(虚弱・衰弱)」を合わせた造語であり、日本で考案された概念です。これは年齢とともにお口の機能が衰えていく状態を指します。近年、「フレイル」という言葉が医療・介護の現場では浸透してきていますが、一般的にはまだまだ馴染みのない言葉かもしれません。
80歳まで20本の歯を残そうという8020運動の推進は有名な取り組みですが、これに加えてオーラルフレイル対策を行う重要性が強く意識されるようになっています。
今回は、オーラルフレイルについて、注目の理由や重要性についてご紹介します。何歳になっても健康でいきいきと過ごしたいとお考えの方は、この機会にオーラルフレイルについてチェックしてみてください。
オーラルフレイルが
注目されている理由
世界的にみても、日本は長寿国として知られています。しかし近年注目されているのは、寿命の長さではなく、年を重ねても健康に生活できる期間の長さ、いわゆる「健康寿命」です。なかでも、「口の健康(オーラルヘルス)」は見逃されがちなポイントのひとつですが、口の機能が衰えると、全身の健康や心身の活力にも影響を及ぼすことがわかっています。つまり、オーラルフレイルの早期発見と予防が、健康寿命を延ばすために重要ということです。日々の口腔ケアを意識し、オーラルフレイルを予防することは、より長く健やかな生活を送るための大切な取り組みとなります。言い換えるとオーラルフレイルの早期発見・予防が、健康寿命の延伸に直結するという事です。
オーラルフレイルは口の衰えを指しますが、老化や高齢による年齢的な衰えとは少し異なります。社会的・精神的な問題などが合わさって起こる不自然な衰えが、オーラルフレイルです。また、フレイルは意識して行動やリハビリをすることで改善ができるため、フレイルが進行する前に早めに気付いて早期対応をとることでより健康に近づきます。
このオーラルフレイルは、以下のような初期症状から始まることが多く、これらを見逃さないことが大切です。
【オーラルフレイルの始まりの症状】
- 滑舌や発音が悪くなる
- 食べこぼしが増える
- むせる、またはむせやすくなる
- かたい食べ物が噛みにくい
- 口腔内の乾燥
これらの症状を早期に発見して対策を行うことでフレイルを食い止めることができます。人生100年時代の現代だからこそ、健康に過ごせる時間はとても大切です。長く生きるだけでなく、年を重ねてもQOL(生活の質)を維持・向上させるためにもオーラルフレイル対策は重要だと言えるでしょう。「加齢だから仕方ない」と見過ごされがちな症状でも、早期に気づいて対処することで改善が見込めるのがオーラルフレイルの特長です。
オーラルフレイルが与える影響は?
お口の健康と心身の関係
近年、オーラルフレイルの人には、健康な口腔状態の人と比較すると以下のような健康リスクが潜んでいることがわかっています。
【オーラルフレイルの人が抱える健康リスク】
- 身体的フレイル 2.4倍
- サルコペニア 2.1倍
- 要介護認定 2.4倍
- 総死亡リスク 2.1倍
身体的フレイルは体重減少や活動量低下などの症状がみられ、サルコペニアとは加齢による骨格筋量の低下で身体機能が落ちた状態を指します。このデータからも、オーラルフレイルは全身に大きな影響を与えていることは明らかです。
また、オーラルフレイルを放置し、口腔機能への関心が低下すると、むし歯や歯周病などになり、歯が抜けたり痛みが出てきたります。ほかにも、食を楽しめなくなったり、友人との食事の機会が減ったり、口元の外見の変化により外出を控えたり、滑舌を気にして会話が減り人との交流が減少したりする等、体だけでなく心への影響、さらには社会的な影響が出てくるリスクがあります。
若年層も要注意!20代の6人に1人が
オーラルフレイル傾向
オーラルフレイルは高齢者だけの問題ではなく、若い人でも安心はできません。20代の6~7人に1人の割合でオーラルフレイルの症状に該当するという調査結果があります。スマートフォンの普及や柔らかい食生活など、現代のライフスタイルの影響で口の機能が使われにくくなっていることも背景にあるとされており、若い世代でも注意が必要です。「若いから大丈夫」ではなく、自分のささいな変化にもしっかり意識を向けておくことで、口の健康だけでなく心身も健やかに守られるのです。
オーラルフレイル対策は
何をすればよい?
オーラルフレイルを予防して健康でいるためには、どのような対策をとればよいのでしょうか。基本的な予防策として「口の中の清潔保持」「加齢による口腔機能の衰えの維持・改善効果」があげられます。それぞれの具体策は以下のとおりです。
【口の中の清潔保持のために】
- 適切なブラッシングの回数や方法の見直し
- デンタルフロスや歯間ブラシ・マウスウォッシュなどのケアグッズを利用する
- 口腔の状態あった歯磨き粉を選ぶ
- 歯科医による歯科検診の定期受診
【加齢による口腔機能の衰えの維持・改善のために】
- 口周辺の唇・舌・頬の筋力をつける口腔体操を行う
- 唾液の分泌を促すための唾液腺マッサージを行う
- 噛む力をつけるためにひと口30回以上噛んで食べる
- 滑舌を良くするために会話や読み上げを習慣にする・早口言葉の練習をする
口の中を清潔に保つことも、口腔機能の衰えを防ぐことも日々の積み重ねが大切です。気になる症状があれば、かかりつけ歯科の歯科医師や自治体の保健・福祉関連の窓口などに相談してみるのもよいでしょう。
詳しい口腔体操の方法などは、日本歯科医師会のホームページにも啓発記事が掲載されています。ほかにも、インターネットでの検索や、自治体の支援や窓口への相談などで情報を得ることができるため、ぜひ確認・活用してみてください(下記のサイトのリンク表示からアクセス)。
健康寿命をのばすカギは、口の健康にあります。「歯科はむし歯や歯周病だけを診る場所」と思われがちですが、今や歯科医師はフレイル予防・介護予防の一翼を担う存在となっています。
オーラルフレイルは気づきと対策で改善できるもの。何歳になっても健康にいきいきと過ごすために、まずは「口の今の状態」に目を向けてみましょう。
参考URL:公益社団法人日本歯科医師会|オーラルフレイル対策のための口腔体操

























































