- 歯科医師インタビュー -INTERVIEW
健康な歯と歯ぐきを守るために、
歯科医師からのメッセージを連載しています。
vol.9
【後編】冷たい飲み物が
しみるのは要注意!
歯ぐきが語るあなたの健康
歯ぐきが語るあなたの健康
歯ぐきが語るあなたの健康
青木歯科医院 院長青木 仁
『冷たい飲み物がしみるのはなぜ?』そんな疑問を持ったことはありませんか。 実は、歯ぐきの健康状態が大きく影響しています。今回は、東京都江東区の青木歯科医院、院長の青木仁先生、歯科衛生士の唐澤良子さんに、知覚過敏と歯周病の深い関係、そして日常でできる予防法について伺いました。こちらのページではインタビューの後半部分をご紹介します。
また、インタビューの前半部分は下記ページからご覧ください。
【インタビュー前半:】
【前編】冷たい飲み物がしみるのは要注意!歯ぐきが語るあなたの健康
Q4. 日常的なケアで
取り入れるといい歯磨き粉や
マウスウォッシュの選び方に
ついて教えてください。
青木 仁 先生
(以下 青木先生):
ケア製品をうまく取り入れるといいと思います。歯は“酸”により溶ける性質があります。食事をするとお口の中が酸性に傾き、カルシウムやリンが歯から溶け出て、しばらくすると唾液中のカルシウムやリンが歯に元に戻る性質がありそのことを再石灰化と呼びます。その時に例えばフッ素配合の製品でケアするとフッ素も一緒に歯に取り込まれ歯を強くし、むし歯になりにくくなる効果が望めます。
硝酸カリウム配合の製品なら象牙細管をコーティングしてくれ知覚過敏にも効果が望め即効性もありますね。また乳酸アルミニウムは持続性があり歯ぐきの炎症を抑える効果が期待できます。体に優しいものがいいと言う方には生薬や天然成分が配合されていて同様の効果を持つ製品も出ています。ご自分に合った物、必要な効果を望める製品を選んでもらえればよいと思います。
ただ製品の用法や用量を間違えて使用すると効果が薄れてしまいます。歯磨剤もほんの少ししかつけない方がいらっしゃるのですが、記載されている用法用量を必ず確認して正しく上手に使っていただきたいと思います。
Q5. 知覚過敏の原因は歯周病以外に
どんなものがあるのでしょうか?
また、どのような治療が
あるのでしょうか?
最新の治療法や技術についても
教えてください
青木先生:
歯周病以外にも知覚過敏の原因はいくつかあります。「加齢による歯ぐきの退縮」「ブラッシング時の強すぎる圧力」「かみ合わせ」「食いしばり・歯ぎしり」「酸蝕症」などです。酸蝕症は炭酸飲料や酸性の食品の過剰摂取、摂食障害などで嘔吐を繰り返すことなどでも起こります。すぐに収まることもありますが、それで放置せず、歯医者さんで原因を突き止めることで再発が防げます。軽度の場合はまずブラッシング指導や知覚過敏に適切なケア製品の選び方をアドバイスします。ブラッシング圧の問題ならばそれで症状が改善される場合もあるかもしれません。痛みや刺激が重い様なら症状に応じコーティング剤を塗り象牙細管を閉鎖する処置や、レーザーで象牙細管を閉鎖する処置を行ったりします。
原因が歯周病の場合は当然、歯周病治療を最優先で進めることになります。歯周病治療を行うと一時的に知覚過敏の症状が出ることが多くありますが、ほとんどの場合は唾液などにコーティングされ自然に治ります。ただ自然治癒しないケースでは、先ほどのコーティング剤やレーザー治療を検討します。
Q6. 食生活や生活習慣が知覚過敏や
歯周病に大きく影響したり
しますか?歯周病による知覚過敏を
防ぐため、歯科医として
特に推奨
する生活習慣の改善ポイントが
あれば教えてください。
青木先生:
食生活や生活習慣は歯を守る上で、とても重要なポイントだと思います。歯の健康は体の健康と連動していますから、体の免疫力を高めるのに規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事は必要不可欠な要素です。むし歯や歯周病に限らず、インフルエンザや新型コロナなどの感染症からも、高い免疫力が体を守ってくれます。また歯周病の原因には、遺伝や体質による宿主因子と、「ストレス」「喫煙」「生活習慣」などの環境因子があります。「なりやすい人」「なりにくい人」という遺伝や体質についてはご自分で変えることは難しいですが、環境因子はご自身で変えることができます。免疫力をあげることが重要なので「栄養」「運動」「睡眠」を心がけましょう。
栄養面でも食生活の見直しが大切ですね。また酸性の炭酸飲料や柑橘類はエナメル質を溶かし、象牙質の露出を引き起こす可能性があります。食べる時間、量や頻度は気をつけてほしいです。酸性の食品に限らず何か食べると口の中は一旦、酸性に傾きます。その後30分~40分程度で元に戻るのですが、いつまでもダラダラと食べ続けると酸性の状態が続くと歯が溶けてしまうリスクが高まります。
歯科衛生士 唐澤 良子さん
(以下 唐澤さん):
「健康のために毎晩リンゴ酢を飲んでいます。」「みかんが大好きで冬は毎日たくさん食べます」という方がいらっしゃるのですが、体の健康には良いかもしれませんが、お口の健康にはちょっとNGという方が結構いらっしゃいます。例えば「寝る直前に毎日」だと眠っている間は唾液の出る量が減っているので歯に対してはリスクがあがってきてしまいますね。
Q7. 歯周病や知覚過敏の予防を
総合的に行うため、
他の医師や健康管理の専門家と
連携することの
重要性に
ついてお話しいただけますか?
青木先生:
歯を治療して食べられるようになったら肥満リスクが上がってしまうなど、これまで歯科では気にしていなかった連携は今まで以上に必要になってくるだろうと考えています。食事の質や量などについても歯の健康だけでなく体の健康にも密接に関わっているからです。例えば重い歯周病で来院する方で体の健康にあまり関心を持ってない方もいらっしゃいます。そういう患者さんに体も含めた健康意識を持っていただく努力を歯科でもすべきだと思っています。実際に全身の健康に問題がありそうな患者さんに対して、ご説明をした上で歯科から医科に紹介状を出して患者さんをお送りするケースもありました。何も問題ないという結果を踏まえた上で歯周病の治療を進めることもあります。今後は医科との連携だけでなく、栄養面や食生活のアドバイスを歯医者さんでもできたらいいと思っています。
唐澤さん:
先生のそのようなお考えから、当院には管理栄養士さんがいます。医師や歯科衛生士では知り得ない食に関する膨大な知識をお持ちです。歯科の知識も積極的に吸収していただいていますし、現場で実際に患者さんとコミュニケーションを取りながら今後、連携の機会を増やしたいと思っています。
歯科医師・衛生士紹介
青木歯科医院 院長青木 仁
- 日本大学歯学部を卒業後、江東区・江戸川区の歯科医院に勤務。
- 平成19年:青木歯科医院にて勤務。
- 平成22年:日本歯周病学会認定歯周病専門医を取得。現在に至る。
青木歯科医院 歯科衛生士唐澤 良子
- 平成21年:青木歯科医院にて勤務。
- 歯周病学会認定歯科衛生士、第2種滅菌技士、第二種歯科感染管理者を取得。現在に至る。